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ESMO GI 2026肝細胞癌

EMERALD-1 OS最終解析:TACE+durvalumab+bevacizumabはPFSを改善するも、OS延長は示さず

塞栓療法適応HCCに対するdurvalumab±bevacizumab+TACEの第III相試験

Overall survival in EMERALD-1: a Phase 3 study of durvalumab ± bevacizumab and transarterial chemoembolisation in participants with unresectable embolisation-eligible hepatocellular carcinoma

Bruno Sangro, Stephen L Chan, Joseph P Erinjeri, Shukui Qin, Zhenggang Ren, Yasuaki Arai, Jeong Heo, Anh Mai, Jose Escobar, Jung-Hwan Yoon, Won Young Tak, Valeriy V Breder, Tanita Suttichaimongkol, Mohamed Bouattour, Shi-Ming Lin, Rebecca Griffin, Stephanie I Udoye, Sajid Ali, Masatoshi Kudo

ESMO Gastrointestinal Cancers Annual Congress 2026 / 2026年7月2日
リード

塞栓療法適応肝細胞癌を対象とした第III相EMERALD-1試験のOS最終解析では、TACE+durvalumab+bevacizumabはPFSを有意に改善した一方、TACE単独に対するOS延長は示されなかった。

本発表のポイント
  • TACE+durvalumab後にdurvalumab+bevacizumabを投与する群では、TACE単独群と比較してPFSが有意に改善した。
  • OS最終解析では、D+B+TACE群およびD+TACE群のいずれも、PBO+TACE群に対するOS延長を示さなかった。
  • PFS改善とOS延長の乖離には、早期死亡、TACE後の併用全身療法未開始例、疾患不均一性、肝硬変関連死亡などが関与した可能性がある。
  • 安全性はdurvalumab、bevacizumab、TACEの既知のプロファイルと概ね一致し、新たな安全性シグナルは認められなかった。

背景

塞栓療法適応肝細胞癌(embolisation-eligible HCC:eeHCC)は、肝機能、腫瘍量、背景肝疾患、併存疾患などが多様であり、非常に不均一な患者集団である。TACEはこの集団に対して20年以上にわたり標準治療として用いられてきたが、TACE単独のPFS中央値は8〜10カ月程度にとどまり、治療成績の改善が求められてきた。

近年、進行肝細胞癌において免疫チェックポイント阻害薬や抗VEGF療法の有効性が示されており、TACEに免疫療法および血管新生阻害薬を組み合わせることで抗腫瘍効果を高める可能性が考えられている。EMERALD-1試験は、TACEにdurvalumab±bevacizumabを併用する治療戦略を検証したグローバル第III相試験である。

既報のPFS最終解析では、TACE+durvalumab後にdurvalumab+bevacizumabを投与する群が、TACE単独群と比較してPFSを統計学的に有意かつ臨床的に意味のある形で改善した。今回の発表では、EMERALD-1試験のOS最終解析および更新された安全性データが報告された。

対象と方法

EMERALD-1は、グローバル、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、第III相試験である。対象は、根治治療の対象とならない塞栓療法適応HCC患者であり、肝外病変を有さず、Child-Pugh A〜B7、ECOG PS 0または1、mRECISTに基づく測定可能病変を有する患者であった。Vp3/Vp4は除外され、全身療法歴およびTACE歴のない患者が対象とされた。

616例が、Arm A:TACE+durvalumab → durvalumab+placebo、Arm B:TACE+durvalumab → durvalumab+bevacizumab、Arm C:TACE+placebo → placebo+placeboの3群に1:1:1で割り付けられた。

TACEはDEB-TACEまたはcTACEが許容され、初回TACEから16週間以内に最大4回まで実施可能とされた。durvalumabまたはplaceboはTACE後7日以降に開始され、TACE期間中は4週ごとに投与された。TACE終了後、durvalumab±bevacizumabまたは対応するplaceboによる併用全身療法が3週ごとに実施された。

主要評価項目は、Arm B対Arm CにおけるRECIST v1.1 by BICRに基づくPFSであった。主な副次評価項目として、Arm A対Arm CのPFS、OS、QoLが設定され、その他の副次評価項目としてORR、TTP、安全性、mRECISTに基づくPFS/ORR/TTPなどが評価された。

患者背景

患者背景は3群間で概ねバランスしていた。年齢中央値は64.5〜66.0歳、男性が約75〜80%、ECOG PS 0が約82〜85%を占めていた。地域別では日本から各群15例が登録され、アジア(日本を除く)が約52%、その他地域が約40%であった。Child-Pugh Aが約97〜98%を占め、BCLC stage Bが約55〜60%、stage Cが約15〜17%であった。

腫瘍量については、up-to-7 criteriaを超える症例が約50〜53%であり、門脈浸潤を有する症例は約6〜8%であった。TACEの方法はcTACEが約58〜59%、DEB-TACEが約39〜41%であり、いずれも群間で大きな偏りは認められなかった。

患者の治療状況

OS最終解析のデータカットオフは2025年7月4日であった。この時点で、約30%の患者が試験継続中であり、約6%が試験治療を継続していた。ランダム化例数は、D+TACE群207例、D+B+TACE群204例、PBO+TACE群205例であった。

併用全身療法を開始した患者は、D+TACE群162例(78.3%)、D+B+TACE群154例(75.5%)、PBO+TACE群155例(75.6%)であり、約4分の1の患者は計画されたTACE後の併用全身療法に移行しなかった。発表では、この点がOS結果を解釈するうえで重要な要素として言及された。

PFS:D+B+TACE群で有意な改善

既報のPFS最終解析では、D+B+TACE群はPBO+TACE群と比較してPFSを有意に改善した。PFS中央値はD+B+TACE群で15.0カ月、PBO+TACE群で8.2カ月であり、ハザード比は0.77(95%信頼区間 0.61–0.98)、層別log-rank p値は0.032であった。12カ月PFS率は55.5% vs 39.8%、18カ月PFS率は43.1% vs 28.3%であった。

一方、D+TACE群ではPFS中央値は10.0カ月、PBO+TACE群では8.2カ月であり、ハザード比は0.94(95%信頼区間 0.75–1.19)、p=0.638であった。D+TACE群では数値的なPFS改善は認められたものの、D+B+TACE群ほど明確な改善は示されなかった。

OS最終解析:D+B+TACE群、D+TACE群ともにOS延長は示さず

今回のOS最終解析では、D+B+TACE群はPBO+TACE群と比較してOSを延長しなかった。OS成熟度は68%であり、OS中央値はD+B+TACE群で29.9カ月、PBO+TACE群で33.3カ月であった。ハザード比は1.10(95%信頼区間 0.87–1.39)、層別log-rank p値は0.470であった。

D+TACE群についても、PBO+TACE群に対するOS延長は認められなかった。OS成熟度は66%であり、OS中央値はD+TACE群で33.6カ月、PBO+TACE群で33.3カ月、ハザード比は0.93(95%信頼区間 0.74–1.19)、p=0.666であった。

発表者は、PFSの有意な改善がOS延長に結びつかなかった点について、明確な単一の説明は困難であるとしつつ、早期死亡、TACE後に併用全身療法を開始できなかった患者の存在、疾患の不均一性、肝硬変関連死亡の競合リスクなど、複数の要因が関与した可能性を挙げた。

OSサブグループ解析

D+B+TACE群対PBO+TACE群のOSサブグループ解析では、全体解析と概ね一貫した結果が示され、明確にOSベネフィットを示す特定のサブグループは認められなかった。地域、TACE modality、門脈浸潤、性別、病因、ECOG PS、腫瘍量、ALBI grade、BCLC stageなどの各サブグループにおいて、全体として明らかなOS改善は確認されなかった。

D+TACE群対PBO+TACE群の解析でも同様に、サブグループ間で大きく異なる傾向はなく、全体解析と整合する結果であった。

早期死亡の探索的解析

OS結果をさらに解釈するため、試験開始後16週間以内に死亡した患者について探索的解析が行われた。16週間以内の死亡は全体で46例に認められた。これらの患者では、全解析対象集団と比較して予後不良因子が多く認められた。具体的には、BCLC stage C、ECOG PS 1、up-to-7 criteriaを超える腫瘍量、ALBI grade 2、門脈大血管浸潤、HAP score C/Dなどの割合が高かった。

早期死亡は、D+TACE群18例、D+B+TACE群19例、PBO+TACE群9例であり、試験治療を受けていない死亡例も9例含まれていた。死亡原因としては、各群とも原疾患による死亡が多く、試験治療との関連が評価された死亡は限られていた。発表では、初期16週間の死亡は、主として予後不良因子や基礎疾患に関連し、必ずしも試験治療に直接関連するものではなかったと説明された。

治療曝露

TACE施行回数については、多くの患者が1〜2回のTACEを受けていた。一方、D+B+TACE群では4回以上のTACEを受けた割合が24.7%であり、D+TACE群13.8%、PBO+TACE群15.0%と比較してやや高かった。

TACE開始から併用全身療法開始までの期間中央値はいずれの群も3.3カ月であった。総治療期間の曝露はD+B+TACE群で13.9カ月と最も長く、D+TACE群7.2カ月、PBO+TACE群8.7カ月を上回っていた。発表では、D+B+TACE群における有害事象や中止の頻度が高い背景として、治療曝露期間が長かったことも関連しうるとされた。

安全性

安全性については、durvalumab、bevacizumab、TACEの既知の安全性プロファイルと概ね一致しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。

全Gradeの有害事象は、D+TACE群で92.7%、D+B+TACE群で98.7%、PBO+TACE群で93.5%に認められた。Grade 3/4の有害事象は、それぞれ30.6%、47.4%、25.0%であり、D+B+TACE群で高頻度であった。

試験治療との関連が疑われるGrade 3/4有害事象は、D+TACE群7.8%、D+B+TACE群27.3%、PBO+TACE群7.5%であった。治療中止につながる有害事象は、それぞれ12.9%、29.2%、8.5%であり、こちらもD+B+TACE群で高かった。免疫関連有害事象は、D+TACE群38.4%、D+B+TACE群65.6%、PBO+TACE群34.5%に認められた。

まとめ

EMERALD-1試験では、TACE+durvalumab後にdurvalumab+bevacizumabを投与する治療により、TACE単独と比較してPFSは有意に改善した。しかし、今回報告されたOS最終解析では、D+B+TACE群およびD+TACE群のいずれも、TACE単独群に対してOS延長を示さなかった。

PFS改善がOSベネフィットに結びつかなかった理由として、発表者は、初期16週間における予後不良因子を有する患者での死亡、TACE後に予定された併用全身療法へ移行できなかった患者の存在、塞栓療法適応HCC集団の疾患不均一性、肝硬変関連死亡の競合リスクなどを挙げた。

安全性については、D+B+TACE群でGrade 3/4有害事象や治療中止につながる有害事象が高頻度であったものの、新たな安全性シグナルは認められなかった。以上より、EMERALD-1は、TACE併用全身療法におけるPFS改善とOS延長の乖離を示した重要な試験であり、塞栓療法適応HCCにおけるエンドポイント設定、患者選択、治療シークエンスを再考する材料となる結果であった。

またディスカッションでは、PFS改善がOS延長に結びつかなかった背景として、塞栓療法適応HCCという患者集団の不均一性、早期死亡例の存在、TACE後に予定された併用全身療法へ移行できなかった症例、肝硬変関連死亡など腫瘍進行以外の競合リスクが論点として挙げられた。さらに、PFSを主要な治療効果指標としてどのように解釈するか、TACEと全身療法をどのタイミングで組み合わせるべきか、今後どのような患者選択が必要になるかについても議論された。

参考

Sangro B, Chan SL, Erinjeri JP, et al.

Overall survival in EMERALD-1: a Phase 3 study of durvalumab ± bevacizumab and transarterial chemoembolisation in participants with unresectable embolisation-eligible hepatocellular carcinoma.

ESMO Gastrointestinal Cancers Annual Congress 2026, 2 July 2026.