背景
塞栓療法適応の肝細胞癌(embolisation-eligible HCC:eeHCC)に対して、TACEは20年以上にわたり標準治療として用いられてきた。一方で、TACE単独治療における無増悪生存期間(PFS)中央値はおおむね8〜10カ月とされ、TACEに全身療法を組み合わせる治療戦略の有用性が検討されてきた。
EMERALD-3試験では、STRIDE(tremelimumab単回投与+durvalumab継続投与)にlenvatinibおよびTACEを併用する治療が、TACE単独と比較してRECIST v1.1 by BICRに基づくPFSを有意に改善し、全生存期間(OS)についても良好な傾向を示した。また、STRIDE+TACEについても、TACE単独と比較してRECIST v1.1 by BICRによるPFSおよびOSの臨床的に意味のある改善が示されている。
TACEなどの局所治療後の腫瘍評価では、病変全体の大きさを評価するRECIST v1.1だけでなく、造影される生存腫瘍を評価対象とするmRECISTが推奨される。本発表では、EMERALD-3試験におけるSTRIDE±lenvatinib+TACEの有効性について、RECIST v1.1 by BICRに加え、mRECIST by BICRおよびmRECIST by investigatorによる腫瘍奏効解析が報告された。
対象と方法
EMERALD-3は、グローバル、ランダム化、非盲検、スポンサー盲検、多施設共同第III相試験である。対象は、病理学的または画像上HCCと確認され、根治治療の対象ではないが塞栓療法の適応を有する症例で、Child-Pugh A、ECOG PS 0または1、肝外病変なし、Vp3/Vp4なし、全身療法歴なしの患者であった。
試験では760例が登録され、Arm A:STRIDE+lenvatinib+TACE(n=293)、Arm B:STRIDE+TACE(n=175)、Arm C:TACE単独(n=292)の3群に割り付けられた。
割付は当初1:1:1で行われ、各群175例に到達した後、事前規定されたプロトコールに基づき、Arm AとArm Cに1:1で追加登録が行われた。TACEはcTACEまたはDEB-TACEが許容され、Arm A/Bではtremelimumab+durvalumab±lenvatinib開始後少なくとも7日以降に、Arm Cではランダム化後7日以内に実施された。
主要評価項目は、Arm A対Arm CにおけるRECIST v1.1 by BICRによるPFSであった。主な副次評価項目として、Arm A対CのOS、Arm B対CのPFSおよびOSが設定され、その他の副次評価項目として、mRECIST by BICRおよびinvestigatorによるPFS、ORR、DCR、DoR、TTP、PFS2、PRO、安全性が評価された。
患者背景
3群間の患者背景は概ねバランスしていた。年齢中央値は65〜67歳、ECOG PS 0の割合は約8割であり、BCLC stage、ALBI grade、腫瘍量、門脈浸潤の有無などに大きな偏りは認められなかった。地域別では、日本からの登録例も含まれていた。
DCO2時点で、試験継続中の症例は各群で約55〜60%であり、Arm Aでは18.4%、Arm Bでは12.6%が何らかの試験治療を継続していた。
STRIDE+lenvatinib+TACE vs TACE:PFS
主要評価項目であるRECIST v1.1 by BICRによるPFSは、STRIDE+lenvatinib+TACE群でTACE単独群と比較して有意に延長した。
RECIST v1.1 by BICRでは、PFS中央値はSTRIDE+lenvatinib+TACE群で13.0カ月、TACE単独群で9.8カ月であり、ハザード比は0.70(95%信頼区間 0.57–0.86)、層別log-rank p値は0.0007であった。12カ月PFS率は56.2% vs 42.9%、18カ月PFS率は42.1% vs 30.8%、24カ月PFS率は30.4% vs 19.3%であった。
mRECIST by investigatorでも同様の傾向が示され、PFS中央値は10.4カ月 vs 6.7カ月、ハザード比は0.64(95%信頼区間 0.53–0.77)であった。また、mRECIST by BICRにおけるPFS中央値は12.9カ月 vs 8.3カ月、ハザード比0.67と報告されており、評価方法にかかわらずSTRIDE+lenvatinib+TACEの有効性が一貫して示された。
STRIDE+lenvatinib+TACE vs TACE:OS
DCO2時点におけるOS成熟度は40.3%であった。OS中央値はSTRIDE+lenvatinib+TACE群で39.5カ月、TACE単独群で34.7カ月であり、ハザード比は0.84(95%信頼区間 0.65–1.09)、p=0.1814であった。
OSについては統計学的有意差には至らなかったものの、STRIDE+lenvatinib+TACE群で良好な傾向が認められた。なお、TACE単独群では後治療として抗がん治療を受けた症例が70.2%に達しており、OSの解釈に影響しうる点が示された。
STRIDE+TACE vs TACE:PFSおよびOS
Arm B対Arm Cの解析は、多重検定手順上、正式検定前の記述的解析として提示された。
RECIST v1.1 by BICRでは、STRIDE+TACE群のPFS中央値は12.9カ月、TACE単独群は8.1カ月であり、ハザード比は0.71(95%信頼区間 0.56–0.91)、nominal p値は0.0062であった。mRECIST by investigatorでもPFS中央値は12.0カ月 vs 6.6カ月、ハザード比0.59(95%信頼区間 0.46–0.75)と、STRIDE+TACE群で一貫したPFS改善傾向が示された。
OSについては、STRIDE+TACE群では中央値未到達、TACE単独群では32.9カ月であり、ハザード比は0.70(95%信頼区間 0.51–0.95)、nominal p値は0.0233であった。こちらも正式な統計学的検定ではないものの、臨床的に意味のある改善傾向が示された。
腫瘍奏効:RECIST v1.1およびmRECISTで一貫した改善
DCO1におけるSTRIDE+lenvatinib+TACE vs TACEの解析では、RECIST v1.1 by BICRによる確定ORRは36.6% vs 30.0%であった。一方、mRECIST by investigatorでは、確定ORRは58.9% vs 42.5%であり、mRECIST by BICRでも67.8% vs 54.8%と、STRIDE+lenvatinib+TACE群で高い奏効割合が示された。
DCO2における3群比較でも、STRIDEベース治療群ではTACE単独群と比較してORRが高い傾向を示した。RECIST v1.1 by BICRによる確定ORRは、STRIDE+lenvatinib+TACE群38.9%、STRIDE+TACE群40.8%、TACE単独群27.0%であった。mRECIST by investigatorでは、それぞれ65.7%、55.4%、41.7%であり、mRECIST by BICRでも73.3%、60.2%、51.7%と報告された。
奏効期間(DoR)についても、STRIDE+lenvatinib+TACE群およびSTRIDE+TACE群でおおむね13〜14カ月前後の持続が確認され、TACE単独群を上回る傾向がみられた。
安全性
DCO2時点の安全性解析では、全Gradeの有害事象はSTRIDE+lenvatinib+TACE群99.7%、STRIDE+TACE群98.9%、TACE単独群88.3%に認められた。Grade 3/4の有害事象は、それぞれ71.4%、64.0%、28.6%であり、STRIDEベース治療群で高頻度であった。
治験薬の中断を要した有害事象はSTRIDE+lenvatinib+TACE群で84.0%、STRIDE+TACE群で44.0%に認められ、lenvatinibの用量減量はSTRIDE+lenvatinib+TACE群の49.5%で行われた。また、治験薬中止につながった有害事象はSTRIDE+lenvatinib+TACE群35.5%、STRIDE+TACE群20.6%であった。
一方で、新たな安全性シグナルは認められず、主な有害事象は免疫療法に関連する甲状腺機能低下症、lenvatinibに関連する高血圧、TACEに関連する塞栓後症候群など、各治療の既知の安全性プロファイルと整合的であった。発表中でも、安全性プロファイルはSTRIDE、lenvatinib、TACEの既知の有害事象と一致していたことが強調された。
まとめ
EMERALD-3試験は、TACE適応HCCにおいて、STRIDEベース治療とTACEの併用が臨床アウトカムを改善することを示した第III相試験である。
今回提示された腫瘍奏効解析では、RECIST v1.1 by BICRだけでなく、TACE後の腫瘍評価に適したmRECIST by investigatorおよびmRECIST by BICRにおいても、STRIDE+lenvatinib+TACEおよびSTRIDE+TACEはTACE単独と比較してPFS、ORR、DoRの改善傾向を示した。これらの結果は、RECIST v1.1 by BICRで示された主要解析の結果と一貫するものであった。
安全性については、STRIDE+lenvatinib+TACE群で有害事象および治験薬中断・中止の頻度が高かったものの、新たな安全性シグナルは認められなかった。以上より、EMERALD-3は、塞栓療法適応HCCに対するSTRIDEベース治療+TACEの有用性を支持するデータであり、今後の治療選択肢となる可能性が示された。
またディスカッションでは、TACE後の腫瘍評価におけるmRECISTの意義、RECIST v1.1とmRECISTで結果が一貫していたことの解釈、治療開始タイミング、TACEと免疫療法・分子標的薬をどのように組み合わせるべきかが議論された。加えて、奏効深度や奏効期間を今後の評価指標としてどのように位置づけるか、一部の症例で根治的治療や次の治療戦略へつながる可能性があるかについても意見が交わされ、TACE適応HCCにおける局所治療と全身療法の最適な組み合わせを検討する必要性が示された。