Clinical Trial
EAST-LC
肺癌
Randomized controlled trial of S-1 versus docetaxel in patients with non-small-cell lung cancer previously treated with platinum-based chemotherapy(East Asia S-1 Trial in Lung Cancer)
Nokihara H, Lu S, Mok TSK, et al. Ann Oncol. 2017;28(11):2698-2706.
主要結果サマリ
背景
進行非小細胞肺癌において、プラチナ併用化学療法 (±免疫チェックポイント阻害剤) による一次治療増悪後の現在の標準治療はドセタキセル (DTX) (±ラムシルマブ) やペメトレキセドである。しかし、DTXはGrade 3/4の好中球減少や発熱性好中球減少の頻度が高い。
エスワン(S-1)は経口細胞傷害性抗癌剤であり、テガフール(5-FUのプロドラッグ)、ギメラシル(5-FU濃度を高める)、オテラシルカリウム(5-FUの消化管毒性を軽減する)を1:0.4:1の割合で含む合剤である。先行する第2相試験でS-1の有望な成績が示されたことから、本試験は、既治療の進行非小細胞肺癌におけるS-1のDTXに対する生存期間の非劣性を検証するために実施された。
シェーマ
既治療非小細胞肺癌1154例を対象に、S-1群577例、DTX群577例へ1:1で無作為化割り付けした。
層別化因子は、治療群、PS、前治療レジメン数、EGFR-TKI治療の有無、EGFR遺伝子変異の状況、性別、組織型、喫煙歴であった。
EAST-LC 試験シェーマ
既治療III期/IV期
非小細胞肺癌
n=1154
非盲検
1:1
非劣性試験
エスワン治療群(n=577)
S-1を以下の用量で1日2回食後内服
day1–28内服 6週毎
<1.25㎡ 80mg/day / 1.25–1.5㎡ 100mg/day / ≧1.5㎡ 120mg/day
ドセタキセル治療群(n=577)
DTX 75mg/m²(日本では60mg/m²)
1時間点滴静注 day1 3週毎
主な適格基準
局所進行あるいは転移性非小細胞肺癌
プラチナ製剤レジメン既治療、かつ既治療レジメン数≦2
ECOG PS 0–2
除外基準
ドセタキセル、フッ化ピリミジン系抗がん剤による治療歴を有する
4週間以内に化学療法、2週間以内にEGFR-TKI治療を受けた症例
症状を伴う脳転移
既治療III期/IV期非小細胞肺癌
n=1154
1:1
エスワン治療群(n=577)
S-1を以下の用量で1日2回食後内服
day1–28内服 6週毎
ドセタキセル治療群(n=577)
DTX 75mg/m²(日本では60mg/m²)
1時間点滴静注 day1 3週毎
主な適格基準
局所進行あるいは転移性非小細胞肺癌
プラチナ製剤レジメン既治療、かつ既治療レジメン数≦2
ECOG PS 0–2
除外基準
ドセタキセル、フッ化ピリミジン系抗がん剤による治療歴を有する
4週間以内に化学療法、2週間以内にEGFR-TKI治療を受けた症例
症状を伴う脳転移
統計学的事項
本試験の主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は有害事象、奏効割合(RR)、無増悪生存期間(PFS)、などであった。
OSにおけるS-1のDTXに対する非劣性を示すため、ランダム化1.5年後における両群の生存期間中央値を12ヶ月と仮定し、ハザード比 (HR) の非劣性マージンを1.2とすると、片側α0.025、検出力80%で非劣性を示すためには両群で944イベント、各群568名が必要とされた。既治療非小細胞肺癌を対象とした第3相試験において、DTXのBSCに対するHRは0.61と報告されており、本試験ではS-1が、BSCに対してDTXが有するベネフィット(効果)の60%程度を保持すれば許容されると考え、非劣性マージンをHR 1.2と算出した。
試験結果
1154名が登録されランダム化によって各群577名が割り当てられた。最大解析集団(FAS)はS-1群577名、DTX群570名(6名同意撤回、1名書類不備)となり、両群の患者背景は均衡がとれていた。
主要評価項目であるOS中央値は、S-1群で12.75ヵ月、DTX群で12.52ヵ月であった。HR 0.945(95%CI 0.833-1.073; P=0.3818)と95%信頼区間の上限が非劣性マージン1.2を下回ったことから、S-1のDTXに対する非劣性が示された。OSのサブグループ解析では特徴的なサブグループは同定できなかった。
PFS、RRには両群間に有意差を認めなかった。
PFSのサブグループ解析では、EGFR遺伝子変異陽性, 女性, 腺癌ではDTXのほうが有効である可能性が示唆された。
有害事象に関して、S-1群では食欲低下、悪心、下痢が多く、DTX群では好中球減少、脱毛症、食欲低下が多かった。発熱性好中球減少症は0.9% vs 13.6%とDTX群で多かった。
EORTC QLQ-C30(がん患者のQOLスコア)において、S-1群は4つの機能スケール(身体機能、役割機能、情緒機能、社会的機能)と、症状スケール(疲労感)で優れていた。また、EORT CQLQ-LC13(肺癌患者における症状スコア)において、S-1群は胸部痛、呼吸困難、末梢神経障害、脱毛症で、DTX群は嚥下障害のスコアで優れた結果だった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
| 全症例 | 中央値 | ||
|---|---|---|---|
| S-1(n=577) | 12.75ヵ月 | HR 0.945 (95%CI 0.833−1.073) P=0.3818 | |
| DTX(n=570) | 12.52ヵ月 |
| 地域 | S-1 | DTX | HR | P値 |
|---|---|---|---|---|
| Japan | 361 | 359 | 0.905 | 0.2141 |
| non-Japan | 216 | 211 | 1.058 | 0.6071 |
2. 無増悪生存期間
| 全症例 | 中央値 | ||
|---|---|---|---|
| S-1(n=577) | 2.86ヵ月 | HR 1.033 (95%CI 0.913−1.168) P=0.6080 | |
| DTX(n=570) | 2.89ヵ月 |
3. 奏効割合
| 全症例 | 奏効割合 | 病勢制御割合 | |
|---|---|---|---|
| S-1(n=570) | 8.3% | 45.4% | 奏効割合 P=0.3761 |
| DTX(n=577) | 9.9% | 44.7% |
4. 有害事象(Grade3/4血液毒性 NCI-CTCAE ver4.0)
| 有害事象 | S-1(n=569) | DTX(n=560) | ||
|---|---|---|---|---|
| 全グレード | グレード3/4 | 全グレード | グレード3/4 | |
| 食欲低下 | 50.4% | 6.5% | 36.4% | 2.7% |
| 悪心 | 36.4% | 0.9% | 26.6% | 1.4% |
| 下痢 | 35.9% | 6.3% | 16.4% | 1.1% |
| 皮膚色素過剰 | 31.3% | 0.0% | 2.0% | 0.0% |
| 口内炎 | 23.4% | 2.5% | 14.3% | 0.9% |
| 嘔吐 | 18.6% | 1.6% | 11.4% | 0.7% |
| 倦怠感 | 18.5% | 0.2% | 23.4% | 0.7% |
| 疲労 | 16.7% | 1.2% | 18.9% | 0.9% |
| 好中球減少 | 14.9% | 5.4% | 54.8% | 47.7% |
| 便秘 | 12.3% | 0.2% | 16.4% | 0.2% |
| 貧血 | 12.1% | 2.6% | 9.5% | 1.4% |
| 体重減少 | 12.1% | 0.5% | 3.6% | 0.0% |
| 血小板減少 | 11.1% | 1.2% | 2.3% | 0.2% |
| 斑状丘疹状皮疹 | 10.4% | 0.9% | 8.0% | 0.2% |
| 白血球減少 | 9.5% | 1.2% | 43.9% | 29.1% |
| 末梢性感覚ニューロパチー | 4.0% | 0.2% | 15.5% | 0.7% |
| 末梢性浮腫 | 2.3% | 0.0% | 15.7% | 0.9% |
| 脱毛症 | 1.9% | 0.0% | 46.6% | 0.0% |
| 発熱性好中球減少症 | 0.9% | 0.9% | 13.4% | 13.4% |
結語
本試験は既治療非小細胞肺癌において、S-1がDTXに対して全生存期間において非劣性であることを証明した第3相試験である。無増悪生存期間、奏効割合はほぼ同様で、有害事象の毒性プロファイルが異なっていた。
S-1はDTXと比較して脱毛がなく、好中球減少も軽度かつ内服治療という特徴を持っており、DTX単剤治療に代わる治療の選択肢の一つになり得る。
執筆・監修
- 執筆:横浜市立大学附属病院 呼吸器内科学 堂下 皓世 先生
- 監修:順天堂大学大学院 医学研究科 呼吸器内科学 朝尾 哲彦 先生
Trial Pulse
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