Clinical Trial

SOLAR

胃癌

S-1 plus leucovorin and oxaliplatin versus S-1 plus cisplatin as first-line therapy in patients with advanced gastric cancer (SOLAR): a randomised, open-label, phase 3 trial.

Kang YK, et al. Lancet Oncol. 2020 Aug;21(8):1045-1056. [PubMed]

第3相一次治療Published
PubMedJournal

主要結果サマリ

比較方向TAS-118+OX vs S-1+CDDP
OS中央値16.0 vs 15.1ヶ月
OS HR0.83
PFS中央値7.1 vs 6.4ヶ月
PFS HR0.79
ORR73% vs 50%

基本情報

項目内容
対象疾患胃癌/食道胃接合部癌
治療ライン一次治療
研究の相第3相
主要評価項目全生存期間
実施地域日本・韓国
日本の参加あり
試験名SOLAR
レジメンTAS-118+オキサリプラチン vs S-1+シスプラチン
登録期間2015年1月〜2016年12月

背景

切除不能胃/食道胃接合部癌に対する一次治療として、各種ガイドラインにおいてフッ化ピリミジン系薬剤と白金製剤の併用化学療法が推奨されている(HER2陽性症例に対するトラスツズマブ併用を含め)。現在、フッ化ピリミジン系薬剤としては5-FU、S-1、カペシタビン(Cape)、白金製剤としてはシスプラチン(CDDP)、オキサリプラチン(OX)があり、多種の併用化学療法が存在するが、その有効性は同程度であり、東アジアにおいてはJCOG9912試験、SPIRITS試験の結果よりS-1+シスプラチン療法が進行胃癌に対する一次化学療法として広く使用されている。

5-FUにロイコボリン(LV)を併用することは結腸癌では一般的に行われている。3000人以上の患者を対象としたメタ解析において、5-FU+LV療法は5-FU単独療法と比較して、奏効割合や全生存期間を改善させることが報告されている。同様に、S-1(1週内服1週休薬:2週毎)にLVを併用することで、S-1の抗腫瘍活性を増加させることが報告されている。

進行胃癌を対象とした、S-1+LV+OXとS-1+CDDPの無作為化比較第2相試験では、奏効割合(各々66% vs 46%)、無増悪生存期間(HR 0.60, 95%信頼区間 0.35-1.02)、全生存期間(HR 0.59, 95%信頼区間 0.37-0.93)のいずれもS-1+LV+OX群で良好な成績を示した。TAS-118はS-1とLVを含有する新規経口薬であり、進行胃癌を対象としてTAS-118+OXとS-1+CDDPの有効性と安全性を比較する第3相試験を行った。

シェーマ

SOLAR シェーマ

切除不能胃癌/食道胃接合部癌(n=711)
R
非盲検 / 1:1 / 優越性試験
TAS-118+オキサリプラチン(n=356)
TAS-118 40–60mg/body×2回/日 Day 1–7
オキサリプラチン 85mg/m² Day 1 2週毎
S-1+シスプラチン(n=355)
S-1 40–60mg/body×2回/日 Day 1–21
シスプラチン 60mg/m² Day 1 or 8 5週毎
主な適格基準
1) 組織学的に診断された転移性または再発の胃・食道胃接合部腺癌
2) RECIST v1.1による測定可能病変または評価可能病変を有する
3) HER2陰性または不明
4) 胃癌に対する治療歴なし(プラチナ系薬剤を含まない補助化学療法は再発確認180日以前に完了していれば適格)
5) ECOG PS:0–1
6) 年齢:20歳以上

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

少なくとも1回薬剤投与を受けた集団をFull Analysis Set(FAS)と定義し、安全性・奏効割合を除く全ての評価項目の解析対象とした。2018年3月に効果安全性評価委員会よりランダム化の際に測定可能または評価可能な転移性病変を持たないことが判明した不適格症例をFASから除外することが勧告されたため、主解析は不適格症例を除外したFASで実施された。

S-1+シスプラチン群の全生存期間中央値を14.5ヶ月、TAS-118+OX群の中央値を19.3ヶ月と推定した場合のハザード比は0.75であり、両側α=0.05、検出力85%で必要症例数を設定したところ、437イベント、686例の登録が必要とされた。その後、日本と韓国で承認されたRamやNivoを使用した後治療の生存への影響を考慮して、効果安全性評価委員会の勧告に基づき、2回目の中間解析前の2017年4月12日にプロトコール改訂を行った。予定登録数は変更せずに、全生存期間中央値をそれぞれS-1+CDDP群15.5ヶ月、TAS-118+OX群19.3ヶ月と再設定し、491の死亡イベントが発生した時点で主解析を行うこととした。

割付調整因子にはECOG PS(0 vs 1)、測定可能病変(あり vs なし)、国(日本 vs 韓国)が用いられた。

試験結果

2015年1月28日から2016年12月5日の間に、日本52施設、韓国10施設より794例がスクリーニングされ、そのうち711例が登録され、356例がTAS-118+OX群に、355例がS-1+CDDP群に割り付けられた。

TAS-118+OX群の4例、S-1+CDDP群の7例は試験治療が行われなかった。

2018年3月に独立効果安全性評価委員会でベースラインの画像評価を行い、測定可能または評価可能病変の有無を確認したところ、19例(TAS-118+OX群5例、S-1+CDDP群14例)が不適格と判定され、この19例は主解析へ含めないことを勧告された。上記より主解析の対象症例数は、681例(TAS-118+OX群347例、S-1+CDDP群334例)となった。

1. 全生存期間(主要評価項目)

Nイベント中央値95%信頼区間
TAS-118+OX347233 (67%)16.0ヶ月13.8–18.3HR 0.83
95%信頼区間
0.69–0.99
p=0.039
S-1+CDDP334258 (77%)15.1ヶ月13.6–16.4

2. 全生存期間に関するサブグループ解析

ほとんどのサブグループは、全対象と一致する結果を示した。

項目分類TAS-118+OX
イベント/N
S-1+CDDP
イベント/N
HR(95%信頼区間)P値
交互作用
性別男性168/251165/2180.87 (0.70–1.08)0.40
女性65/9693/1160.70 (0.51–0.97)0.40
年齢65歳未満144/201155/1940.85 (0.68–1.07)0.58
65歳以上89/146103/1400.78 (0.58–1.03)0.58
国日本138/221149/2120.86 (0.69–1.09)0.46
韓国95/126109/1220.76 (0.58–1.00)0.46
体表面積(m²)1.25未満0/25/5—1.00
1.25以上1.50未満49/6954/720.82 (0.56–1.21)1.00
1.50以上184/276199/2570.83 (0.68–1.02)1.00
ECOG PS0114/192130/1800.71 (0.56–0.92)0.071
1119/155128/1541.00 (0.78–1.28)0.071
原発巣なし32/6033/570.84 (0.52–1.37)0.86
あり201/287225/2770.82 (0.68–0.99)0.86
原発部位胃224/331248/3190.82 (0.69–0.98)0.97
胃食道接合部9/1610/150.75 (0.31–1.86)0.97
組織型びまん型(未分化型)171/241186/2330.82 (0.66–1.01)0.94
腸型(分化型)62/10571/1000.82 (0.59–1.16)0.94
疾患状態Stage IV203/294235/2950.81 (0.67–0.98)0.53
再発30/5323/390.93 (0.54–1.61)0.53
測定可能病変なし81/12792/1200.74 (0.55–1.00)0.45
あり152/220166/2140.87 (0.70–1.99)0.45
転移臓器個数177/12778/1150.88 (0.64–1.20)0.29
2102/146114/1430.89 (0.68–1.16)0.29
3以上54/7466/760.67 (0.46–0.96)0.29
肝転移なし164/251186/2390.75 (0.61–0.93)0.13
あり69/9672/951.01 (0.73–1.41)0.13
腹膜播種なし146/212150/2000.94 (0.75–1.18)0.066
あり87/135108/1340.66 (0.50–0.87)0.066
腹水なし162/245173/2320.85 (0.69–1.06)0.51
あり71/10285/1020.77 (0.56–1.06)0.51
リンパ節転移なし60/10663/920.80 (0.56–1.14)0.80
あり173/241195/2420.85 (0.69–1.04)0.80

3. 無増悪生存期間

ほとんどのサブグループは、全対象と一致する結果を示した。

Nイベント中央値95%信頼区間
TAS-118+OX347268 (77%)7.1ヶ月6.8–8.3HR 0.79
95%信頼区間
0.66–0.93
p=0.0045
S-1+CDDP334278 (83%)6.4ヶ月5.6–6.9

4. 奏効割合/腫瘍縮小率

測定可能病変を有する423例が対象。

TAS-118+OX(n=211)S-1+CDDP(n=212)p値
CR6 (3%)7 (3%)—
PR149 (71%)99 (47%)—
SD42 (20%)81 (38%)—
PD13 (6%)24 (11%)—
NE1 (<1%)1 (<1%)—
奏効割合(95%信頼区間)155 (73%)(67.0–79.3)106 (50%)(43.1–56.9)<0.0001
病勢制御割合(95%信頼区間)197 (93%)(89.1–96.3)187 (88%)(83.1–92.2)—
最大腫瘍縮小率(範囲)-52.94%(-100.0–74.6)-33.85%(-100.0–126.8)<0.001
6週時点の腫瘍縮小率(範囲)-34.57%(-79.0–74.6)-18.93%(-100.0–126.8)<0.001
12週時点の腫瘍縮小率(範囲)-45.02%(-100.0–173.4)-33.60%(-100.0–85.7)0.002

5. 治療成功期間

Nイベント中央値95%信頼区間
TAS-118+OX347330 (95%)6.1ヶ月5.6–6.7HR 0.82
95%信頼区間
0.70–0.96
p=0.011
S-1+CDDP334325 (97%)5.3ヶ月4.7–6.2

6. 投与状況/後治療

中止につながる最も頻度の高い有害事象は食欲不振であった(TAS-118+OX群3例[1%] vs S-1+CDDP群3例[1%])。

減量:TAS-118+OX群では、173例(50%)でTAS-118の減量を要し、167例(48%)でOXの減量を要した。S-1+CDDP群では、113例(34%)でS-1の減量を要し、94例(28%)でCDDPの減量を要した。

投与延期:TAS-118+OX群の307例(88%)、およびS-1+CDDP群の230例(69%)で1回以上の投与延期を要した。

N(%)TAS-118+OX(n=347)S-1+CDDP(n=334)
データカットオフ時点での治療中止例330 (95)325 (97)
治療中止理由:病勢進行253 (77)258 (79)
治療中止理由:28日を越える有害事象のため次サイクル開始遅延24 (7)33 (10)
治療中止理由:患者希望または医師判断35 (11)25 (8)
治療中止理由:腫瘍縮小による手術移行16 (5)9 (3)
治療中止理由:その他2 (1)0 (0)
後治療移行269 (82)280 (86)

7. 相対用量強度

N(%)TAS-118+OXS-1+CDDP
TAS-118(四分位範囲)79.6%(67.5–91.7)—
S-1(四分位範囲)—86.7%(74.5–95.5)
OX(四分位範囲)68.3%(46.3–87.5)—
CDDP(四分位範囲)—91.6%(67.0–100.0)

8. 有害事象(CTCAE v4.03)

TAS-118+OX群で2例(肺結核と単純ヘルペスウイルス性肺炎)の治療関連死亡を認めた。

重篤な有害事象は、TAS-118+OX群352例中155例(44%)、S-1+CDDP群348例中159例(46%)で観察され、薬物関連の重篤な有害事象はTAS-118+OX群90例(26%)、S-1+CDDP群70例(20%)で観察された。両群で最も頻度が高い薬物関連の重篤な有害事象は食欲不振であり、TAS-118+OX群34例(10%)、S-1+CDDP群23例(7%)で報告された。

事後分析では、TAS-118+OX群またはS-1+CDDP群のいずれにおいても、ECOG PS 0および1の患者間でGrade 3以上の有害事象の発生割合に実質的な差は観察されなかった。

有害事象TAS-118+OX
Grade 1–2
TAS-118+OX
Grade 3
TAS-118+OX
Grade 4
S-1+CDDP
Grade 1–2
S-1+CDDP
Grade 3
S-1+CDDP
Grade 4
好中球数減少86 (24)47 (13)7 (2)80 (23)68 (20)20 (6)
貧血75 (21)56 (16)0 (0)74 (21)63 (18)1 (<1)
血小板数減少105 (30)3 (1)4 (1)66 (19)13 (4)7 (2)
白血球減少52 (15)6 (2)1 (<1)62 (18)30 (9)5 (1)
末梢性感覚ニューロパチー212 (60)30 (9)0 (0)57 (16)1 (<1)0 (0)
悪心200 (57)14 (4)0 (0)188 (54)11 (3)0 (0)
食欲不振196 (56)53 (15)0 (0)191 (55)46 (13)0 (0)
下痢174 (49)33 (9)0 (0)134 (39)15 (4)0 (0)
口腔粘膜炎140 (40)13 (4)0 (0)83 (24)5 (1)0 (0)
便秘128 (36)4 (1)0 (0)145 (42)0 (0)0 (0)
嘔吐120 (34)6 (2)0 (0)91 (26)6 (2)0 (0)
疲労113 (32)10 (3)0 (0)102 (29)9 (3)0 (0)
味覚異常111 (32)1 (<1)0 (0)82 (24)0 (0)0 (0)
腹痛88 (25)10 (3)0 (0)77 (22)6 (2)0 (0)
発熱83 (24)2 (1)0 (0)79 (23)0 (0)0 (0)
体重減少83 (24)19 (5)0 (0)53 (15)10 (3)0 (0)
倦怠感81 (23)2 (1)0 (0)76 (22)3 (1)0 (0)
皮膚色素過剰64 (18)0 (0)0 (0)50 (14)0 (0)0 (0)
手掌・測定発赤知覚不全症候群58 (16)3 (1)0 (0)27 (8)1 (<1)0 (0)
AST増加54 (15)8 (2)0 (0)21 (6)5 (1)0 (0)
低アルブミン血症48 (14)13 (4)0 (0)34 (10)12 (3)0 (0)
消化不良48 (14)0 (0)0 (0)24 (7)0 (0)0 (0)
ALT増加48 (14)6 (2)1 (<1)19 (5)6 (2)0 (0)
不眠症46 (13)0 (0)0 (0)27 (8)1 (<1)0 (0)
流涙41 (12)1 (<1)0 (0)36 (10)2 (1)0 (0)
鼻咽頭炎38 (11)0 (0)0 (0)22 (6)0 (0)0 (0)
上気道感染症34 (10)0 (0)0 (0)36 (10)0 (0)0 (0)
しゃっくり33 (9)0 (0)0 (0)76 (22)2 (1)0 (0)
浮動性めまい31 (9)4 (1)0 (0)49 (14)1 (<1)0 (0)
浮腫63 (18)0 (0)0 (0)81 (23)1 (<1)0 (0)
クレアチニン増加10 (3)0 (0)0 (0)36 (10)7 (2)1 (<1)
発熱性好中球減少症0 (0)5 (1)1 (<1)0 (0)7 (2)0 (0)

結語

TAS-118+OX併用療法はS-1+CDDP併用療法と比較して切除不能胃癌の全生存期間、無増悪生存期間、奏効割合を改善させた。また、ほとんどの症例で毒性マネジメントも良好であった。TAS-118+CDDP併用療法はアジア人における切除不能胃癌の一次化学療法の選択肢の一つとなり得る。

関連論文

  1. Hironaka S, Sugimoto N, Yamaguchi K, et al. S-1 plus leucovorin versus S-1 plus leucovorin and oxaliplatin versus S-1 plus cisplatin in patients with advanced gastric cancer: a randomised, multicentre, open-label, phase 2 trial. The Lancet Oncology 2016;17:99-108.

執筆・監修

執筆:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 副医長 白数 洋充 先生 監修:岐阜大学医学部付属病院 がんセンター 副センター長/准教授 牧山 明資 先生

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