Clinical Trial

WJOG4007

胃癌

Randomized, open-label, phase III study comparing irinotecan with paclitaxel in patients with advanced gastric cancer without severe peritoneal metastasis after failure of prior combination chemotherapy using fluoropyrimidine plus platinum: WJOG 4007 trial.

Hironaka S, Ueda S, Yasui H, et al. J Clin Oncol. 2013;31(35):4438-4444. [PubMed]

第3相二次治療Published
PubMedJournal

主要結果サマリ

比較方向PTX vs IRI
OS中央値9.5 vs 8.4ヶ月
OS HR1.13
PFS中央値3.6 vs 2.3ヶ月
PFS HR1.14
ORR20.9% vs 13.6%

基本情報

項目内容
対象疾患胃癌
治療ライン二次治療
研究の相第3相
主要評価項目全生存期間
実施地域国内
日本の参加あり
試験名WJOG4007
レジメンパクリタキセル vs イリノテカン
登録期間2007年8月〜2010年8月

背景

JCOG9912試験やSPIRITS試験などの結果に基づいて、本邦における進行胃癌に対する標準的一次治療はS-1+シスプラチン療法となっているが、これらの試験が実施された当時、明確な生存延長を示すデータが存在していなかったにもかかわらず、70%を超える症例が二次化学療法を受けていた。

二次化学療法については多くの第2相試験が行われている。タキサン系薬剤に関しては、パクリタキセル(210mg/m²)とドセタキセル(60mg/m²)の3週毎投与法ではGrade 3–4の好中球数減少が高頻度(37~88%)であったのに対し、パクリタキセル毎週投与法(80mg/m²)では低頻度であった(3~32%)。奏効割合や無増悪生存期間はいずれの投与法も同様の結果であり、パクリタキセル毎週投与法の生存期間中央値は5~6.9ヶ月と報告されている。

一方、イリノテカン隔週投与(150mg/m²)はパクリタキセル毎週投与法より高度な有害事象が生じるものの、生存期間中央値は8~10ヶ月とされている。本試験はフッ化ピリミジン系+白金製剤に不応となった進行胃癌に対する二次治療としてのパクリタキセルとイリノテカンを比較検討する第3相試験として実施された。

シェーマ

WJOG4007 シェーマ

切除不能進行・再発胃癌(n=219)
R
非盲検 / 1:1 / 優越性試験
パクリタキセル(n=108)
パクリタキセル 80mg/m² Day 1, 8, 15
4週毎
イリノテカン(n=111)
イリノテカン 150mg/m² Day 1, 15
4週毎
主な適格基準
1) 年齢:20–75歳
2) ECOG PS:0–2
3) フッ化ピリミジン系+白金製剤の治療中または治療後1ヶ月以内に画像検査で増悪が確認
4) 高度な腹膜播種は除外

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間

過去に報告された第2相試験の結果に加え、筆者らの見解(パクリタキセル後のイリノテカンは腹膜播種の増悪により投与が困難と想定)を合わせて、本試験はパクリタキセル群の生存期間中央値を5ヶ月、イリノテカン群の生存期間中央値を7.5ヶ月と推定した。

本試験はパクリタキセルを対照群としてイリノテカンの全生存期間のハザード比が0.67となることを検証する優越性試験として設計され、検出力80%、両側α=0.05として、220例の登録が必要と設定された。

試験結果

2007年8月〜2010年8月の間に日本国内37施設より223例が登録され、パクリタキセル群に111例、イリノテカン群に112例が割り付けられた。

前治療がフッ化ピリミジン単独療法(パクリタキセル群2例/イリノテカン群1例)と画像検査で増悪なし(パクリタキセル群1例)の4例は適格基準を満たさず、パクリタキセル群108例とイリノテカン群111例を解析対象とした。

無作為割付後にパクリタキセル群3例とイリノテカン群2例は規定の治療が行われなかったため、安全性解析対象はパクリタキセル群108例、イリノテカン群110例となった。観察期間中央値は17.6ヶ月であった。

1. 患者背景

患者背景は両群間でバランスがとれていた。

2. 全生存期間(主要評価項目)

中央値95%信頼区間
パクリタキセル9.5ヶ月8.4–10.7HR 1.13
95%信頼区間
0.86–1.49
p=0.38
イリノテカン8.4ヶ月7.6–9.8

3. 無増悪生存期間

中央値95%信頼区間
パクリタキセル3.6ヶ月3.3–3.8HR 1.14
95%信頼区間
0.88–1.49
p=0.33
イリノテカン2.3ヶ月2.2–3.1

4. 奏効割合

標的病変あり奏効割合p値
パクリタキセルN=9120.9%0.24
イリノテカンN=8813.6%

5. 投与状況

投与回数中央値(範囲)は、パクリタキセル群11.5回(1–146)、イリノテカン群4.5回(1–39)であった。

治療中止理由の内訳は、病勢進行86.7%、有害事象7.3%、同意撤回3.2%、その他2.8%であった。有害事象による治療中止は、パクリタキセル群5.6%、イリノテカン群9.1%であった。

投与状況表

項目パクリタキセルイリノテカン
投与回数中央値(範囲)11.5回(1–146)4.5回(1–39)
治療中止理由:病勢進行86.7%86.7%
治療中止理由:有害事象7.3%7.3%
治療中止理由:同意撤回3.2%3.2%
治療中止理由:その他2.8%2.8%
有害事象による治療中止5.6%9.1%

6. 有害事象

有害事象パクリタキセル
全Grade
パクリタキセル
Grade 3–4
イリノテカン
全Grade
イリノテカン
Grade 3–4
白血球減少88 (81.4)22 (20.4)76 (69.4)21 (19.1)
好中球数減少85 (78.7)31 (28.7)77 (70.0)43 (39.1)
貧血69 (63.9)23 (21.3)84 (76.4)33 (30.0)
血小板数減少6 (5.6)1 (0.9)15 (13.6)2 (1.8)
発熱性好中球減少症3 (2.8)3 (2.8)10 (9.1)10 (9.1)
悪心33 (30.6)2 (1.9)61 (55.5)5 (4.5)
食欲不振50 (46.3)8 (7.4)78 (70.1)19 (17.3)
下痢21 (19.4)1 (0.9)49 (44.5)5 (4.5)
末梢性感覚ニューロパチー62 (57.4)8 (7.4)2 (1.8)0 (0)
血中ビリルビン増加10 (9.3)3 (2.8)21 (19.1)4 (3.6)
低ナトリウム血症21 (19.4)4 (3.7)35 (31.8)17 (15.5)
治療関連死亡0 (0)2 (1.8)

最終投与日から30日以内の死亡:パクリタキセル群 3例(2.7%)/イリノテカン群 4例(3.6%)

治療関連死亡:パクリタキセル群では認めなかったが、イリノテカン群で2例(1.8%)に認めた(重症肺炎 1例/胃穿孔 1例)。

7. 後治療

項目パクリタキセルイリノテカンp値
三次化学療法施行97 (89.8)80 (72.1)0.001
 イリノテカン81 (75.0)——
 タキサン—67 (60.4)—
三次化学療法以降:全て—
 イリノテカン87 (80.6)——
 タキサン—75 (67.6)—

8. 生存期間に関するサブグループ解析

ほぼ全てのサブグループで、パクリタキセルの生存期間がやや良好であったが、統計学的な有意差は認めなかった。

サブグループ症例数ハザード比95%信頼区間
全症例2191.130.86–1.49
年齢 65歳未満1091.360.92–2.01
年齢 65歳以上1100.970.65–1.44
性別 男性1711.080.79–1.48
性別 女性481.380.76–2.49
ECOG PS 0–12111.120.85–1.49
ECOG PS 287.270.79–66.6
胃切除歴 あり601.050.61–1.80
胃切除歴 なし1591.240.90–1.71
組織型 Intestinal(腸型)1081.150.77–1.71
組織型 Diffuse(びまん型)1101.110.75–1.63
測定可能病変 あり1831.190.88–1.61
測定可能病変 なし360.910.46–1.81
腹膜播種 あり561.310.76–2.28
腹膜播種 なし1631.070.77–1.48
転移臓器個数 0–1臓器1210.910.62–1.33
転移臓器個数 2臓器以上981.641.08–2.49

探索的解析

探索的解析では、二次化学療法以降にイリノテカンとパクリタキセル両剤を使用した症例で解析を行ったが、統計学的有意差は認めなかった。

探索的解析結果

パクリタキセルイリノテカン
生存期間中央値10.1ヶ月10.1ヶ月HR 0.96
95%信頼区間
0.69–1.32
p=0.96

結語

本試験の結果、パクリタキセルとイリノテカンは進行胃癌に対する二次化学療法としていずれも選択可能なレジメンと考えらえた。各レジメンの毒性の特徴と投与間隔の違いが治療方針を決定する上で参考になると考えられた。

執筆・監修

執筆:九州大学大学院 消化器・総合外科 助教 中島 雄一郎 先生 監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生

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