Clinical Trial
EURTAC
肺癌
Erlotinib versus standard chemotherapy as first-line treatment for European patients with advanced EGFR mutation-positive non-small-cell lung cancer (EURTAC): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial
Rosell R, Carcereny E, Gervais R, et al. Lancet Oncol. 2012;13(3):239-246.
主要結果サマリ
背景
非小細胞肺癌(NSCLC)のうち、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性例は約30-50%を占める。EGFR遺伝子変異陽性例に対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の有効性がIPASS試験など複数の試験で示されていたが、この試験が開始された2007年の時点では、従来の標準治療であるプラチナ併用化学療法とのランダム比較試験は行われていなかった。本試験は、未治療EGFR陽性非小細胞肺癌の患者を対象として、第一世代EGFR-TKIであるエルロチニブ(ERL)と、従来の標準治療であるプラチナ併用化学療法を比較した多施設共同無作為化非盲検の第3相試験である。
シェーマ
未治療EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌患者173例を対象に、非盲検下でエルロチニブ群とプラチナ併用化学療法群へ1:1で無作為化された。
EURTAC 試験シェーマ
未治療EGFR陽性
非小細胞肺癌
n=173
非盲検
1:1
優越性試験
エルロチニブ 150mg 1日1回(n=86)
プラチナ併用化学療法(n=87)
シスプラチン 75mg/m² day1
ドセタキセル 75mg/m² day1 or ゲムシタビン 1250mg/m² day1,8
3週毎 4サイクル
シスプラチン不適応例ではカルボプラチン使用
主な適格基準
EGFR遺伝子変異陽性(del19/L858R)
ECOG PS 0–2
IIIB期/IV期
補足:カルボプラチン使用時は、AUC=6 day1+ドセタキセル75mg/m² day1、またはAUC=5 day1+ゲムシタビン1000mg/m² day1,8
未治療EGFR陽性非小細胞肺癌
n=173
1:1
エルロチニブ群(n=86)
エルロチニブ 150mg 1日1回
プラチナ併用化学療法群(n=87)
シスプラチン 75mg/m² day1
ドセタキセル 75mg/m² day1 or ゲムシタビン 1250mg/m² day1,8
3週毎 4サイクル
主な適格基準
EGFR遺伝子変異陽性(del19/L858R)
ECOG PS 0–2
IIIB期/IV期
補足:シスプラチン不適応例ではカルボプラチンを使用。
統計学的事項
主要評価項目は無増悪生存期間である。本試験はEGFR遺伝子変異陽性例において、プラチナ併用化学療法を対照群としてERL単剤療法の優越性を検証した第3相試験である。過去の試験結果から、PFS中央値をERL 10ヶ月、化学療法6ヶ月と仮定し、両側α=0.05、検出力80%と設定すると必要なPFSイベント数は計135、必要症例数は計174例となった。
試験結果
2007年2月15日〜2011年1月4日の期間に42施設より173例が登録され、ERL群には86例、化学療法群には87例が割り付けられた。65%のPFSイベントが起きた時点で、予定されていた中間解析の結果、早期有効中止となった。最終的なデータカットオフは2011年1月26日で、追跡期間中央値はERL群が18.9ヵ月、化学療法群が14.4ヵ月であった。両群間で、患者背景に明らかな差は認められなかった。
1. 無増悪生存期間(主要評価項目)
ERL群は化学療法群と比較して無増悪生存期間を有意に延長した。
| 全症例 | 中央値 | 95%信頼区間(CI) | |
|---|---|---|---|
| ERL群 | 9.7ヶ月 | 8.4−12.3ヵ月 | HR 0.37 (95%CI 0.25−0.54) P < 0.0001 |
| 化学療法群 | 5.2ヶ月 | 4.5−5.8ヵ月 |
2. 全生存期間
全生存期間には両群間で有意差を認めなかった。
| 全症例 | 中央値 | 95%CI | |
|---|---|---|---|
| ERL群 | 19.3ヶ月 | 14.7−26.8ヵ月 | HR 1.04 (95%CI 0.65−1.68) P = 0.87 |
| 化学療法群 | 19.5ヶ月 | 16.1ヵ月−未到達 |
3. 奏効割合
奏効割合は化学療法群と比較してERL群で有意に高かった。
| 全症例 | 奏効割合 | |
|---|---|---|
| ERL群 | 64% | OR 7.5 (95%CI: 3.6−16.5) P < 0.0001 |
| 化学療法群 | 18% |
4. 有害事象
ERL群で最も多く認めた有害事象は、皮疹、アミノトランスフェラーゼ上昇であった。化学療法群で最も多く認めた有害事象は貧血、好中球数減少であった。有害事象により試験治療が中止となった症例はERL群11例、化学療法群19例であった。
| 有害事象 | ERL群(N=84) | 化学療法群(N=82) | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| Grade 1–2 | Grade 3 | Grade 4 | Grade 1–2 | Grade 3 | Grade 4 | |
| 皮疹 | 56(67%) | 11(13%) | 0 | 4(5%) | 0 | 0 |
| 下痢 | 44(52%) | 4(5%) | 0 | 15(18%) | 0 | 0 |
| アミノトランスフェラーゼ上昇 | 3(4%) | 2(2%) | 0 | 5(6%) | 0 | 0 |
| 肺臓炎 | 0 | 1(1%) | 0 | 0 | 1(1%) | 0 |
| 食欲不振 | 26(31%) | 0 | 0 | 26(32%) | 2(2%) | 0 |
| 疲労 | 43(51%) | 5(6%) | 0 | 43(52%) | 16(20%) | 0 |
| 末梢神経障害 | 7(8%) | 0 | 1(1%) | 11(13%) | 1(1%) | 0 |
| 好中球数減少 | 0 | 0 | 0 | 15(18%) | 12(15%) | 6(7%) |
| 貧血 | 9(11%) | 0 | 1(1%) | 37(45%) | 3(4%) | 0 |
| 血小板数減少 | 1(1%) | 0 | 0 | 1(1%) | 6(7%) | 6(7%) |
| 発熱性好中球減少症 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1(1%) | 2(2%) |
5. サブ解析:無増悪生存期間 (ERL群 vs 化学療法群)
無増悪生存期間のサブ解析では、多くのサブグループでERL群の有効性が示された。
| 項目 | 症例数 | ハザード比 | 95%信頼区間 | |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 173 | 0.37 | 0.25−0.54 | |
| 年齢 | <65歳 | 85 | 0.44 | 0.25−0.75 |
| 年齢 | ≥65歳 | 88 | 0.28 | 0.16−0.51 |
| 性別 | 女性 | 126 | 0.35 | 0.22−0.55 |
| 性別 | 男性 | 47 | 0.38 | 0.17−0.84 |
| 喫煙歴 | 現喫煙 | 19 | 0.56 | 0.15−2.15 |
| 喫煙歴 | 元喫煙者 | 34 | 1.05 | 0.40−2.74 |
| 喫煙歴 | なし | 120 | 0.24 | 0.15−0.39 |
| ECOG PS | 0 | 57 | 0.26 | 0.12−0.59 |
| ECOG PS | 1 | 92 | 0.37 | 0.22−0.62 |
| ECOG PS | 2 | 24 | 0.48 | 0.15−1.48 |
| 遺伝子変異 | Del19 | 115 | 0.30 | 0.18−0.50 |
| 遺伝子変異 | L858R | 58 | 0.55 | 0.29−1.02 |
結語
未治療EGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者において、ERLはプラチナ併用化学療法と比較して無増悪生存期間の有意な延長を示した。本試験の結果により、ERLはEGFR遺伝子変異陽性NSCLCの標準治療の一つとなり得ることが示された。
執筆・監修
執筆:静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 レジデント 宮脇 太一 先生 監修:静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科 医長 和久田 一茂 先生
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