Clinical Trial

JCOG9912

胃癌

Fluorouracil versus combination of irinotecan plus cisplatin versus S-1 in metastatic gastric cancer: a randomised phase 3 study.

Boku N, Yamamoto S, Fukuda H, et al. Lancet Oncol. 2009;10:1063-9.

第3相一次治療Published
PubMed

主要結果サマリ

OS中央値5-FU 10.8 / IP 12.3 / S-1 11.4カ月
PFS中央値5-FU 2.9 / IP 4.8 / S-1 4.2カ月
TTF中央値5-FU 2.3 / IP 3.7 / S-1 4.0カ月
奏効割合5-FU 9% / IP 38% / S-1 28%
2年生存割合5-FU 14% / IP 18% / S-1 21%
登録例数704例

基本情報

項目内容
対象疾患胃癌
治療ライン一次治療
研究の相第3相
主要評価項目全生存期間
実施地域国内
日本の参加あり
試験名JCOG9912
レジメン5-FU vs イリノテカン+シスプラチン vs S-1
登録期間2000年11月〜2006年1月

背景

1990年代初頭に胃癌に対し、アントラサイクリン系薬剤、マイトマイシンC、5-FU、メトトレキサートおよびシスプラチンを用いた臨床試験が複数行われたが、標準治療は確立しなかった。3つの第3相試験が報告されたが、5-FU単剤療法に対して5-FU+シスプラチン療法の生存改善は示されなかった。以上より、5-FU持続静注が次の第3相試験の標準治療として結論付けられた。 1990年代後半に胃癌に対して新規薬剤が開発された。イリノテカン+シスプラチン療法は第2相試験において、奏効割合59%および生存期間中央値322日と良好な成績を認める一方、Grade 4の好中球数減少(57%)やGrade 3–4の下痢(20%)が高頻度に生じたが、減量によって管理可能と考えられた。また、S-1単剤療法も2つの第2相試験の結果が報告され、奏効割合45%、2年生存割合17%と良好な有効性、かつ、Grade 3–4の治療関連有害事象は5%以下と忍容性も良好であり、外来ベースでの投与が可能であった。 以上をふまえ、標準治療である5-FU単剤療法に対し、イリノテカン+シスプラチン療法の優越性、およびS-1の非劣性を検証する3アームの第3相試験が企画された。

シェーマ

JCOG9912 シェーマ
切除不能進行・再発胃癌
(n=704)
非盲検
R
1:1:1
5-FU持続静注(n=234)
5-FU 800mg/m² Day 1–5(120時間) 4週毎
イリノテカン+シスプラチン(n=236)
イリノテカン 70mg/m² Day 1、15
シスプラチン 80mg/m² Day 1 4週毎
6サイクル施行後はイリノテカン単剤(同量/2週毎で継続)
S-1(n=234)
S-1 40mg/m²×2回/日 Day 1–28 4週内服2週休薬・6週毎
主な適格基準
1)病理学的に診断されている切除不能進行再発胃腺癌
2)経口摂取可能
3)年齢:20–75歳
4)ECOG PS 0–2
5)化学療法歴・放射線治療歴なし

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間 本試験は5-FU持続静注を対照群として、6カ月生存割合50%・1年生存割合30%と設定した。イリノテカン+シスプラチン群において両者が10ポイント改善すること、およびS-1群の非劣性マージンを5%と設定し(HR 1.16)、検出力70%、片側α=0.05として、450例の登録が必要と設定された。 上記の症例集積が完了する頃、全症例の1年生存期間を算出したところ、予想よりも極めて良好であったため、2005年3月に症例数を再計算することとし、検出力80%に変更、690例の登録に変更した。 また、2007年2月には統計学的効率性を向上させるためにHolm’s法に基づいて、まずは二群間の差が最大のものをα=0.025で比較し、もし有意であった場合には、もう1群をα=0.05で検証することとした。またS-1の非劣性が証明された場合、優越性も検証するデザインとなった。

試験結果

2000年11月から2006年1月の間に704例が登録され、234例が5-FUに、236例がイリノテカン+シスプラチンに、234例がS-1に無作為割り付けされた。 患者背景は3群間でバランスがとれていた。 ECOG PSはほとんどの症例で0–1であった(ECOG PS 0/1/2:5-FU群152/79/3例、イリノテカン+シスプラチン群151/81/4例、S-1群151/80/3例)。 各群に1例ずつ、術後補助化学療法歴のある症例が含まれた。 全体の531例(約75%)が標的病変を有していた。

1. 全生存期間(主要評価項目)

死亡イベント:601例(85%)、データカットオフ:2007年3月

中央値四分位範囲
5-FU10.8カ月5.7–17.8HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
優越性:HR 0.85
(95%信頼区間 0.70–1.04)
片側p=0.0552

HR比較:S-1/5-FU
非劣性:HR 0.83
(95%信頼区間 0.68–1.01)
片側p=0.0005
優越性:片側p=0.0336;片側α=0.025
イリノテカン+シスプラチン12.3カ月8.1–19.5
S-111.4カ月6.4–21.3

2. 全生存期間(追加解析)

死亡イベント:660例(94%)、データカットオフ:2008年11月

2年生存割合
5-FU14%HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
優越性:HR 0.82
(95%信頼区間 0.68–0.99)
片側p=0.0194

HR比較:S-1/5-FU
非劣性:HR 0.83
(95%信頼区間 0.68–1.00)
片側p=0.0002
優越性:片側p=0.0233
イリノテカン+シスプラチン18%
S-121%

3. 全生存期間(探索的サブ解析:標的病変を有する症例のみ)

n中央値四分位範囲
5-FU1759.0カ月5.4–15.2HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
HR 0.73
(95%信頼区間 0.59–0.91)
片側p=0.0022

HR比較:S-1/5-FU
HR 0.84
(95%信頼区間 0.68–1.05)
片側p=0.0590
イリノテカン+シスプラチン18112.1カ月8.1–19.0
S-117510.5カ月5.6–19.2

4. 全生存期間(探索的サブ解析:標的病変を有さない症例のみ)

n中央値四分位範囲
5-FU5913.5カ月7.9–23.4HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
HR 1.12
(95%信頼区間 0.76–1.65)
片側p=0.7219

HR比較:S-1/5-FU
HR 0.79
(95%信頼区間 0.53–1.16)
片側p=0.1101
イリノテカン+シスプラチン5514.4カ月9.0–20.7
S-15918.1カ月10.5–26.6

5. 治療成功期間

5-FU群とS-1群に割り付けられた症例の約85%は病勢進行により治療中止となったが、イリノテカン+シスプラチン群に割り付けられた症例の3分の1は有害事象で中止となった。 二次化学療法への移行:5-FU群194例(83%)、イリノテカン+シスプラチン群183例(78%)、S-1群173例(74%) 5-FU群の内、70例がイリノテカン+シスプラチン・20例がS-1、イリノテカン+シスプラチン群の内、127例がS-1・7例が5-FU、S-1群の内、68例がイリノテカン+シスプラチン・2例が5-FUにクロスオーバーした。

中央値四分位範囲
5-FU2.3カ月1.4–5.4HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
HR 0.85(95%信頼区間 0.71–1.02)
片側p=0.0430

HR比較:S-1/5-FU
HR 0.73(95%信頼区間 0.61–0.88)
片側p=0.0004
イリノテカン+シスプラチン3.7カ月1.9–5.6
S-14.0カ月2.0–6.3

6. 無増悪生存期間

中央値四分位範囲
5-FU2.9カ月1.7–5.7HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
HR 0.69(95%信頼区間 0.58–0.83)
片側p<0.0001

HR比較:S-1/5-FU
HR 0.77(95%信頼区間 0.64–0.93)
片側p=0.0027
イリノテカン+シスプラチン4.8カ月2.3–8.2
S-14.2カ月2.2–7.1

7. 無増悪生存期間(標的病変を有する症例のみ)

中央値四分位範囲
5-FU2.2カ月1.4–5.3HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
HR 0.56(95%信頼区間 0.45–0.69)
片側p<0.0001

HR比較:S-1/5-FU
HR 0.80(95%信頼区間 0.65–0.98)
片側p=0.0174
イリノテカン+シスプラチン4.8カ月2.3–8.1
S-13.8カ月2.0–5.6

8. 奏効割合(標的病変を有する症例のみ)

n奏効割合
5-FU1759%
イリノテカン+シスプラチン18138%
S-117428%

9. 非入院生存期間

中央値四分位範囲
5-FU7.2カ月2.7–13.3HR比較:イリノテカン+シスプラチン/5-FU
HR 0.81(95%信頼区間 0.67–0.97)
片側p=0.0115

HR比較:S-1/5-FU
HR 0.77(95%信頼区間 0.63–0.92)
片側p=0.0025
イリノテカン+シスプラチン9.5カ月4.9–15.7
S-19.3カ月4.2–18.0

10. 6カ月以内に報告された主な有害事象(Grade 3–4)

主な有害事象
(Grade 3–4)
5-FU
(n=232)
イリノテカン+シスプラチン
(n=234)
S-1
(n=234)
白血球減少3例(1%)152例(65%)13例(6%)
貧血36例(16%)92例(39%)30例(13%)
発熱性好中球減少症0例22例(9%)0例
好中球減少を伴う感染症0例18例(8%)1例(<1%)
好中球減少を伴わない感染症9例(4%)9例(4%)13例(6%)
クレアチニン増加0例5例(2%)2例(1%)
低ナトリウム血症15例(6%)53例(23%)12例(5%)
疲労4例(2%)24例(10%)12例(5%)
食欲不振29例(13%)77例(33%)29例(12%)
下痢1例(<1%)21例(9%)18例(8%)
悪心16例(7%)48例(21%)13例(6%)
原著Table 2のうち、臨床的に重要なGrade 3–4事象を抜粋。安全性解析対象は5-FU群232例、イリノテカン+シスプラチン群234例、S-1群234例。
安全性アウトカム
安全性結果5-FU(n=232)イリノテカン+シスプラチン(n=234)S-1(n=234)
治療関連死亡0例3例(1%)1例(<1%)

結語

S-1は5-FU持続静注に対して非劣性を示し、経口投与の簡便性の観点から、切除不能進行・再発胃癌の一次治療として5-FU持続静注に置き換え得ると考えられた。一方、イリノテカン+シスプラチンは5-FU持続静注に対する優越性を示せなかった。 本試験では本邦の過去の試験(JCOG9205)と比較し、同じ5-FU持続静注の無増悪生存期間は2カ月程度で大きな違いを認めないが、JCOG9205と比較し、本試験で全生存期間中央値が約2カ月の延長を示した。本試験では70%以上の症例が二次化学療法を受けており、JCOG9205(53%)より高率に二次化学療法へ移行出来ていた。二次化学療法の有効性は現時点では明らかではないが、本試験の良好な全生存期間に二次化学療法が寄与していたことが示唆された。

執筆・監修

執筆:神戸市立医療センター中央市民病院 腫瘍内科 医長 松本 俊彦 先生 監修:北海道大学病院 消化器内科 助教 結城 敏志 先生

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