Clinical Trial

JCOG1013

胃癌

Docetaxel plus cisplatin and S-1 versus cisplatin and S-1 in patients with advanced gastric cancer (JCOG1013): an open-label, phase 3, randomised controlled trial.

Yamada Y, Boku N, Mizusawa J, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2019 Jul;4(7):501–510.

第3相一次治療Published
PubMed

主要結果サマリ

OS中央値(DCS/CS)14.2 / 15.3カ月
OS HR(DCS/CS)0.99
PFS中央値(DCS/CS)7.4 / 6.5カ月
PFS HR(DCS/CS)0.99
奏効割合(DCS/CS)59% / 56%
登録例数741例

基本情報

項目内容
対象疾患胃癌
治療ライン一次治療
研究の相第3相
主要評価項目全生存期間
実施地域日本
日本の参加あり
試験名JCOG1013
レジメンドセタキセル+シスプラチン+S-1 vs シスプラチン+S-1
登録期間2012年4月3日〜2016年3月18日

背景

無作為化比較試験であるJCOG9912試験によって、転移性胃癌患者に対して、S-1単剤療法が5-FU持続静注と同様の有効性であることが示され、その後、SPIRITS試験において、S-1単剤療法と比較し、シスプラチン+S-1併用療法(CS療法)の延命効果が示された。世界的にはシスプラチン+5-FU併用療法に対するカペシタビン+シスプラチン療法(XP療法)の非劣性が示され、さらに、オキサリプラチンは、ヨーロッパと日本で行われた3つの第3相試験でシスプラチンと同様の有効性が示された。したがって、経口フッ化ピリミジン製剤+プラチナ併用療法は、進行胃癌患者に対する世界的な標準治療として確立されている。 2006年に報告された第3相試験であるV325試験は、二次治療の治療選択肢がほとんどなかった時代の試験であるが、進行胃癌患者に対して、5-FU+シスプラチン併用療法に対する3剤併用療法(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU併用療法)の有意な生存延長を示した。しかし、3剤併用療法は重篤な血液学的有害事象の発生頻度が高く、生存期間延長の優位性が小さいことから、標準治療として世界的に受け入れられていない。 ドセタキセル+シスプラチン+S-1併用療法(DCS療法)の第2相試験では、高い有効性が報告された。この結果を受けて、シスプラチンの用量調整を行ったDCS療法は切除不能胃癌における有効な治療になり得ると考え、DCS療法と標準治療であるCS療法との比較試験を実施した。

シェーマ

JCOG1013 シェーマ
切除不能胃癌
(n=741)
非盲検
R
1:1
ドセタキセル+シスプラチン+S-1(DCS療法)(n=370)
ドセタキセル 40mg/m² Day 1
シスプラチン 60mg/m² Day 1
S-1 80mg/m²/日 Day 1–14 28日毎
最大6サイクル → 以後S-1+ドセタキセルで維持療法
シスプラチン+S-1(CS療法)(n=371)
シスプラチン 60mg/m² Day 8
S-1 80mg/m²/日 Day 1–21 35日毎
最大8サイクル → 以後S-1で維持療法
主な適格基準
1)年齢:20–75歳
2)組織学的に診断されている切除不能進行再発胃腺癌
3)HER2:陰性または未検査
4)ECOG PS:0–1
5)化学療法未施行(術後補助化学療法終了後24週以上の再発は適格)

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間(ITT集団) 本試験はCS療法に対するDCS療法の全生存期間における優越性を検証する試験として設計された。DCS群の生存期間中央値を16.5カ月、CS群の生存期間中央値を13.5カ月、検出力80%、片側α=0.05、4.5年間の登録期間、1.5年間の追跡期間を設定し、732人の登録、614のイベントが必要と想定された。脱落例を考慮し、目標登録症例数は740例と設定された。 割付調整因子にはECOG PS(0 vs 1)、登録時の疾患状況(切除不能 vs 再発)、測定可能病変(あり vs なし)、転移臓器個数(0–1個 vs 2個以上)、組織型(分化型 vs 未分化型)が用いられた。 本試験は予定症例数の50%が登録された段階で中間解析が行われた。この中間解析では多重性を調整した後、主要評価項目の評価を実施した。中間解析で使用した有意水準は0.00029であり、最終解析における有意水準は0.04989となった。

試験結果

2012年4月3日から2016年3月18日までの期間に日本国内56施設より741人が無作為割付けされた(DCS群:370人、CS群:371人)。 CS群の1名は登録直前に胃切除が実施されており不適格となり、DCS群では3例が不適格となった。これら4例の内、コントロール不能な糖尿病の1例を除いた3例はプロトコール治療を受けた。 有効性解析にはITT解析集団である全登録例741例が含められ、プロトコール治療が実施されなかった16例を除いた725例が安全性解析対象集団となった。 両群間の患者背景は、概ねバランスがとれていた。 データカットオフ(2017年9月19日)時点における、88人の生存患者の観察期間中央値は30.9カ月(四分位範囲23.6–41.1)であった。

1. 全生存期間(主要評価項目)

Nイベント中央値95%信頼区間1年生存割合2年生存割合
DCS37032214.2カ月12.9–15.959.7%(54.5–64.5)26.0%(21.6–30.6)
CS37133115.3カ月14.2–16.261.5%(56.3–66.2)24.2%(19.9–28.7)
HR 0.99(DCS/CS、95%信頼区間 0.85–1.16)、p=0.47(片側)

2. 組織型別の全生存期間

未分化型
N中央値95%信頼区間
DCS24113.3カ月11.7–14.5
CS24114.2カ月12.2–15.6
HR 0.98(95%信頼区間 0.81–1.18), p=0.83
分化型
N中央値95%信頼区間
DCS12917.5カ月14.0–20.4
CS13017.5カ月15.0–20.6
HR 1.06(95%信頼区間 0.81–1.39), p=0.65
DCS+CS
N中央値95%信頼区間
未分化型48213.7カ月12.5–14.6
分化型25917.5カ月15.7–18.9
HR 1.38(95%信頼区間 1.17–1.62), p=0.0001[単変量解析]

3. 無増悪生存期間

N中央値95%信頼区間
DCS3707.4カ月6.7–7.8
CS3716.5カ月5.9–7.4
HR 0.99(DCS/CS、95%信頼区間 0.86–1.15), p=0.92

4. 奏効割合(最良効果)

数値は n(%)
評価DCS(n=226)CS(n=218)
CR2 (<1)0
PR132 (58)122 (56)
SD36 (16)19 (9)
PD38 (17)54 (25)
NE18 (8)23 (11)
奏効割合(95%信頼区間)59%(53–66)56%(49–63)
奏効割合も両群間に有意差は認められなかった(p=0.50)。

5. 全生存期間に関するサブグループ解析

術後補助化学療法歴がある症例ではDCS群において良好な結果が得られ、有意な交互作用を示した。 胃切除歴の有無も同様の交互作用が示された。

DCS(イベント/N)CS(イベント/N)
組織型分化型108/129111/1301.06(0.81–1.39)0.71
未分化型214/241220/2410.98(0.81–1.18)
ECOG PS0199/239212/2410.98(0.81–1.20)0.78
1123/131119/1301.02(0.79–1.31)
年齢65歳以下172/193190/2060.97(0.79–1.19)0.65
66歳以上150/177141/1651.03(0.82–1.30)
性別男性223/257226/2560.98(0.81–1.17)0.53
女性99/113105/1151.07(0.81–1.41)
転移臓器個数0–1133/157132/1571.07(0.84–1.37)0.50
2以上189/213199/2140.96(0.78–1.17)
腹膜播種なし154/184147/1680.98(0.78–1.23)0.79
あり168/186184/2031.02(0.83–1.26)
測定可能病変なし128/144135/1531.09(0.85–1.39)0.37
あり194/226196/2180.95(0.78–1.15)
胃切除歴なし261/293261/2931.14(0.96–1.36)0.004
あり61/7770/780.64(0.45–0.90)
術後補助化学療法なし288/328300/3381.07(0.91–1.26)0.020
あり34/4231/330.51(0.30–0.85)
右から2列目は各サブグループのHR(95%信頼区間)、右端は各因子全体の交互作用p値。
術後補助化学療法歴:あり
Nイベント中央値95%信頼区間
DCS423419.5カ月13.7–30.5
CS333114.1カ月9.4–17.7
非層別 HR 0.51(95%信頼区間 0.30–0.85)
術後補助化学療法歴:なし
Nイベント中央値95%信頼区間
DCS32828813.8カ月12.5–15.7
CS33830015.4カ月14.2–16.2
非層別 HR 1.07(95%信頼区間 0.91–1.26)

6. 投与状況

投与サイクル数の中央値:DCS群 6サイクル (四分位範囲4–10)、CS群 4サイクル (四分位範囲3–7) DCS群における相対用量強度:S-1 71.5%、シスプラチン 66.6%、ドセタキセル 86.7% CS群における相対用量強度:S-1 76.8%、シスプラチン 88.1% DCS群において減量を要した症例:シスプラチン262例(73%)、S-1 222例(62%)、ドセタキセル195例(54%) CS群において減量を要した症例:シスプラチン131例(36%)、S-1 138例(38%) 治療中止理由として最多は病勢進行(DCS群254例[69%]、CS群270例[73%])であり、続いて有害事象(DCS群40例[11%]、CS群39例[11%])であった。 治療関連有害事象による治療拒否はDCS群34例(9%)、CS群29例(8%)に観察された。

数値は n(%)
後治療DCS(n=370)CS(n=371)
二次治療284 (77)294 (79)
イリノテカン116 (31)50 (13)
タキサン系106 (29)227 (61)
ラムシルマブ21 (6)61 (16)

7. 主な有害事象

G-CSFはDCS群62例(17%)、CS群35例(10%)に投与された。治療関連死亡は、DCS群で3例(血栓塞栓症、心筋梗塞、肺炎・呼吸機能不全)、CS群で1例(肺炎)に認めた。

数値は n(%)
有害事象DCS(n=357)CS(n=365)
白血球減少
G1–2166 (46)G3110 (31)G410 (3)
G1–2175 (48)G345 (12)G415 (4)
貧血
G1–2271 (76)G367 (19)G416 (5)
G1–2271 (74)G371 (19)G418 (5)
血小板数減少
G1–2235 (66)G312 (3)G42 (<1)
G1–2233 (64)G324 (7)G47 (2)
好中球数減少
G1–2112 (31)G3120 (34)G489 (25)
G1–2179 (49)G381 (22)G436 (10)
低アルブミン血症
G1–2341 (96)G311 (3)G4-
G1–2342 (94)G315 (4)G4-
血中ビリルビン増加
G1–229 (8)G33 (<1)G40 (0)
G1–246 (13)G33 (<1)G40 (0)
クレアチニン増加
G1–2126 (35)G32 (<1)G41 (<1)
G1–2138 (38)G32 (<1)G42 (<1)
低ナトリウム血症
G1–2261 (73)G349 (14)G42 (<1)
G1–2267 (73)G343 (12)G42 (<1)
疲労
G1–2203 (57)G340 (11)G4-
G1–2212 (58)G342 (11)G4-
食欲不振
G1–2218 (61)G394 (26)G40 (0)
G1–2230 (63)G381 (22)G40 (0)
悪心
G1–2214 (60)G331 (9)G4-
G1–2208 (57)G327 (7)G4-
嘔吐
G1–283 (23)G38 (2)G40 (0)
G1–281 (22)G39 (2)G40 (0)
下痢
G1–2149 (42)G325 (7)G40 (0)
G1–2123 (34)G327 (7)G40 (0)
口腔粘膜炎
G1–2120 (34)G39 (3)G40 (0)
G1–284 (23)G38 (2)G40 (0)
末梢性感覚ニューロパチー
G1–267 (19)G30 (0)G40 (0)
G1–251 (14)G30 (0)G40 (0)
脱毛症
G1–2260 (73)G3-G4-
G1–242 (11)G3-G4-
原著で有害事象評価対象として報告された分母はDCS群357例、CS群365例。数値は各Gradeの例数(%)。

結語

化学療法未施行の日本人進行胃癌症例に対して、CS療法に対するドセタキセルの上乗せは生存期間の有意な延長を示さず、CS療法が引き続き、標準的一次化学療法と考えられる。

執筆・監修

執筆:大阪医療センター 消化器内科 医師 長谷川 裕子 先生 監修:岐阜大学医学部附属病院 がんセンター 副センター長/准教授 牧山 明資 先生

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